部分矯正とは、歯並び全体ではなく、歯並びや噛み合わせの気になるところだけを整える矯正治療法です。
軽度な症状の方に向いています。
歯並び全体を整えるのではないので、整えたい特定の箇所だけに矯正装置をつけます。
このような方に向いています
- 前歯の歯並びが気になっている方
- 前歯の隙間が気になっている方
- 奥歯の噛み合わせに問題がない方
- 歯を収めるスペースの不足量が少ない方
- 骨格に異常がない方
- 短期間で治療を終わらせたい方
- 治療費をなるべく抑えたい方
このような方には向いていません
- 歯を収めるスペースが足りない方
- 八重歯を治したい方
- 上下の歯を噛み合わせたときに前歯が噛み合っていない方
- 上顎と下顎の歯並びの真ん中があっていない方
- 骨格異常に原因がある歯並びや噛み合わせの方 など
治療の特徴
部分矯正は次のような特徴があります。
- 1
治療期間が短い
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歯並び全体と整えようとすると、2〜3年程度かかります。
部分矯正は、歯並びの特定の場所だけを対象としているので、1年程度、早ければ6ヶ月と治療期間も短く抑えられます。
- 2
治療費の軽減
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部分矯正は、歯並びの特定の場所だけ整えるため、全体を整える場合と比べて治療費も軽くなります。
例えば、インプラントを埋込するために十分なスペースを開けることができます。
前歯の補綴物を作り出す時、歯肉のラインや左右対称に揃えたりすることができます。
歯を圧下することができ、対合にインプラントを入れることができます。
- 3
奥歯の噛み合わせは変わらない
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部分矯正では前歯部の歯並びだけ変えますので、奥歯の噛み合わせは変わりません。
治療中も、治療前と同じように噛めます。
- 4
使用機器
-
部分矯正では、主にマルチブラケット矯正装置とマウスピース矯正装置を使います。
- 5
マルチブラケット矯正装置
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マルチブラケット矯正は、最もオーソドックスな矯正治療法です。
部分矯正で使う場合は、主に前歯の表側だけにブラケットという金具とワイヤーをつけて歯を動かします。
期待できる効果
部分矯正では次のような効果が期待できます。
前歯の歯並びの改善
前歯部の歯並びがきれいに整えられます。
短期間での治療完了
部分矯正で歯を動かす範囲は広くありません。 このため、通常の矯正治療よりも治療期間は短いです。
治療費の軽減
歯を移動する範囲が少なく、治療期間も短くてすむ分、治療費も通常の矯正治療よりも低く抑えられます。
注意事項
部分矯正には次のような注意点があります。
矯正装置を正しく使う
部分矯正も、通常の矯正治療と同じく、矯正装置を正しく使わなければ治療の効果は得られません。歯磨きをしっかりと行う
矯正治療中、虫歯や歯周病になって終えば、虫歯や歯周病治療が優先されるので、矯正治療は一時中断です。治療期間が長くなり、治療費も上がる可能性があるので、歯磨きはしっかりと行うようにしてください。
受診日はしっかり守る
部分矯正も通常の矯正治療と同じく、治療の進捗状況の確認や、矯正装置の調整などのために、定期的に歯科医院を受診しなければなりません。受診日はしっかりと守るようにしてください。
治療を受けられない方
次のような方は部分矯正では治療できません。
噛み合わせを改善させたい方
部分矯正は、前歯の歯並びの改善を主に行う矯正治療です。
全体的な矯正のことは異なります。
奥歯の噛み合わせを改善させることはできません。
また奥歯の噛み合わせに原因があり、前歯の歯並びが乱れている方も治療できません。
突出した口元は変化しません。
抜歯しなければならない方
部分矯正は前歯部の軽度な歯並びだけを整えます。
前歯部に歯を収めるためのスペースが足りない方は、歯をきれいに並べられません。
小臼歯という奥歯を抜いてスペースを確保するため、部分矯正ではなく通常の矯正治療で治療します。
骨格に原因のある方
前歯の歯列不正の原因が、顎の骨にあるという方は、部分矯正での改善は難しいです。
通常の矯正治療でなければ、改善できない可能性が高いです。
治療について
部分矯正は次のような治療になります。
主に前歯部だけを対象とした矯正治療
部分矯正は、基本的に歯並びを改善させるだけの矯正治療です。
軽度な噛み合わせの改善や閉じにく口元の治療は対象外です。
奥歯の噛み合わせには触れない
部分矯正では奥歯の位置や噛み合わせは変えられないので、奥歯に原因がある場合は部分矯正では治せません。
軽い歯列不正を対象とした矯正治療
部分矯正は、前歯の範囲だけで歯並びを整えるため、前歯部の軽い歯列不正を対象とした矯正治療です。
前歯の範囲だけでの歯の移動で対応できない場合は、通常の矯正治療で整えなければなりません。
リスク・副作用
部分矯正には次のようなリスクや副作用があります。
後戻りしやすい
部分矯正は、通常の矯正治療と同じく後戻りを防ぐ必要があります。
後戻りを防ぐため、リテーナーという矯正装置を正しく使うようにしてください。
通常の矯正治療ほどにきれいになりにくい
通常の矯正治療と比べると、一部分しか整えない部分矯正には限界があります。
このため、どうしても治療後の歯並びは、通常の矯正治療の方がきれいになります。
お口全体をバランスよくきれいな歯並びにしたい方は、通常の全体的な矯正治療をご検討ください。
治療の流れ
ここでは、部分矯正の中でもオーソドックスなマルチブラケット矯正での治療例を説明します。
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- 1問診
- どのようなところが気になっているのかをお聞きします。
また、現在、そして過去の病気の治療歴、食べ物や薬へのアレルギーの有無などもお尋ねします。
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- 2検査
- 歯型をとって歯並びの模型を作る、お口やお顔の写真を撮影する、お口やお顔のレントゲン写真を撮影するなどして、
歯並びや噛み合わせ、そして顎の骨格の状態などを調べます。
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- 3診断と治療方針の決定
- 検査結果から、歯並びや噛み合わせなどを評価し、どのような歯並びなのか診断します。
そして、部分矯正の適応があるかどうかを判断し、適応がある場合は部分矯正の治療計画を立案します。
治療計画に同意をいただければ、治療開始です。
-
- 4マルチブラケット矯正装置の装着
- 歯の表面にブラケットという金具を専用の接着剤で装着します。
ブラケットにはワイヤーを通す溝があります。
全てのブラケットの溝にワイヤーをかけて、固定します。
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- 5定期的なワイヤー交換
- 1ヶ月おきくらいが多いのですが、ワイヤーを定期的に交換して歯並びを整えていきます。
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- 6保定
- 整えられた歯並びが元の状態に戻るのを防ぐため、保定という治療に移ります。
保定は、リテーナーという矯正装置を使います。
リテーナーを使っている間は、6ヶ月〜1年くらいの間隔で経過観察します。
治療後の注意点
部分矯正の治療後の注意点は次のとおりです。
保定装置を正しく使う
部分矯正も後戻りの可能性があります。
後戻りを防ぐため、後戻りを防ぐ矯正装置であるリテーナーを正しく使うようにしてください。
保定中の定期受診を守る
後戻りをしていないか、リテーナーの状態に不具合がないかを、定期的に歯科医院を受診してみてもらってください。
よくある質問
部分矯正についてよく尋ねられるご質問をご紹介します。
部分矯正でどれだけきれいになりますか
部分矯正は、あくまでも前歯の範囲で歯を動かして並べ直す矯正治療です。
軽度の隙間や歯並びの凸凹はきれいに整えられます。
矯正装置が見えないように矯正できますか?
”矯正装置を歯の裏側につける裏側矯正””マウスピース矯正”など、目立ちにくい部分矯正もあります。
どのような方法が適しているか、主治医とご相談ください。
出っ歯も部分矯正で治せますか?
上顎の前歯が出ている場合、出ている前歯を後ろに下げなければならないのですが、多くの場合下げる余地はほとんどありません。
出っ歯の方は通常の矯正治療を考えていただいた方がいいでしょう。
費用
部分矯正の治療費は、それぞれの歯科医院で異なりますが、おおむね次の通りです。
マルチブラケット矯正
矯正装置を歯の表側につけるタイプで15〜50万円ほど、歯の裏側につけるタイプで50〜80万円ほどです。
マウスピース矯正
マウスピース矯正では、45〜95万円くらいです。
医師からのコメント
部分矯正は、主に前歯部の歯並びだけを整える矯正治療です。
通常の矯正治療と比べると限界がありますが、治療期間が短い、治療費が低いなどのメリットもあります。
前歯部の歯並びだけが気になる、歯列不正の程度が軽い、といった方は、部分矯正で治してみるのもいいかもしれませんよ。
当院の症例
- 治療前
- 治療後
- 患者さま情報
26歳 女性
- 主訴
歯茎が気になる。
- 症状
過蓋咬合、下顎の中切歯2本先天欠如と上顎小臼歯の欠損を伴う上顎前突。
- 治療期間
1年2ヶ月
- 治療費
82.5万円(税込み)
- 治療詳細
上顎だけの治療で、舌側だけの治療を希望されていたため、上顎のみのリンガルアプライアンスを行い、ガミースマイルの改善のためTADを使用した。
- 治療回数
42回
- 抜歯部位
無し 0本
- 治療におけるリスク・副作用
※歯を移動させる時、違和感や痛みが数日~1週間ほど出ます。感じ方には個人差があります。
※歯が移動する速さには個人差があります。早く移動する人もいればゆっくりな人もいます。
※矯正装置が装着されるといつもより歯磨きが難しくなります。
※毎日、丁寧に装置の清掃をする必要があります。
※清掃不十分な場合、虫歯や歯周疾患に罹患することがあります。多数の虫歯や歯周病の進行が認められた場合、治療をして中断・中止することがあります。
※歯が移動するとき(個人差がありますが)不可避的に歯の根が短くなることがあります(歯根吸収)。
※治療中あるいは治療後に顎の関節に何らかの症状があらわれることがあります。
※著しい叢生部分や歯肉炎や歯周病に罹患した部分、歯牙の欠損がある部分は歯肉退縮することがあります。
※動的治療が終了した後は、保定装置を使用する必要があります。指示通り使用できない場合は後戻りや予想のできない歯牙移動が起こることがあります。